福岡地方裁判所 昭和55年(わ)186号 判決 1980年7月15日
本籍
大阪市南区問屋町浜五〇番地
住居
福岡市南区井尻三丁目八番二八号
会社役員(元呉服小売業)
田中光治
昭和一二年三月三一日
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官馬場久枝出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月及び罰金一、〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、福岡市南区井尻四丁目三番三七号(当時、福岡市南区大字井尻一七二-一二)所在のおむらビル一階において、呉服小売店を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て
第一、昭和五一年分の実際総所得金額が四、〇四六万〇、九九九円(実際課税総所得金額三、九四九万七、〇〇〇円)で、これに対する所得税額が一、八二四万六、一〇〇円(但し、源泉徴収税額を控除したもの)であつたにもかかわらず、売上の一部を除外し、これによつて得た資金を家族名義や架空名義の定期預金にするなどの行為により、右所得金額のうち三、四五五万三、三八七円を秘匿したうえ、昭和五二年三月一四日、同市東区馬出一丁目八番一号所在の博多税務署において、同税務署長に対し、昭和五一年分の実際総所得金額が五九〇万七、六一二円(実際課税総所得金額四九四万三、〇〇〇円)でこれに対する所得税額が八五万六、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額と申告税額との差額一、七三八万九、八〇〇円を免れ
第二、昭和五二年分の実際総所得金額が三、九五三万六、三八八円(実際課税総所得金額三、八四〇万五、〇〇〇円)で、これに対する所得税額が一、七四四万七、六〇〇円(但し、源泉徴収税額を控除したもの)であつたにもかかわらず、前同様の行為により、右所得金額のうち三、一三九万七、一一〇円を秘匿したうえ、昭和五三年三月一四日、前記税務署において、前記税務署長に対し、昭和五二年分の実際総所得金額が八一三万九、二七八円(実際課税総所得金額七〇〇万八、〇〇〇円)でこれに対する所得税額が一四四万二、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額との差額一、六〇〇万四、九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通
一、被告人の検察官に対する供述調書三通
一、押収してある総勘定元帳一綴(昭和五五年押第一一五号の二)
一、大蔵事務官作成の昭和五四年二月七日付査察官調査書
一、株式会社福岡銀行井尻支店長秋吉安清(四通、検三一ないし三四号)、株式会社福岡相互銀行井尻支店長桑原瑩司(四通、検三五ないし三八号)、筑紫信用組合井尻支店長福原泰良(二通)、株式会社九州相互銀行井尻支店長宮本寛(二通)、株式会社福岡銀行二日市支店長和田勇雄、福岡地方貯金局長佐渡谷男(二通)、大和証券投資信託販売株式会社福岡支店長泥谷脩二各作成の各証明書
一、被告人ほか一名作成の昭和五四年二月二三日付上申書
一、福田信子の検察官に対する供述調書
一、押収してある売掛帳一綴(同押号の六)、日計票一綴(同押号の一三)
一、大蔵事務官作成の昭和五四年三月八日付査察官調査書(検四九号)
一、被告人作成の昭和五四年三月三〇日付上申書
一、被告人作成の昭和五四年三月五日付上申書
一、押収してある金銭借用証書一通(同押号の一〇)
一、川原一人、田中信行の検察官に対する各供述調書
一、川原一人、田中信行各作成の各上申書
一、押収してある領収証一綴(同押号の一一)
一、被告人作成の昭和五四年三月七日付上申書
一、大蔵事務官作成の昭和五四年三月二五日付査察官調査書
一、田中隆江の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、田中隆江の検察官に対する供述調書
一、西山株式会社取締役社長西山半六、裏井株式会社代表者裏井健二、丸福商事株式会社取締役社長戸部田巧、株式会社美吉代表者北村美雄、株式会社大嘉代表取締役澤田嘉衛、木村実業株式会社代表取締役須崎幹啓、澤村株式会社福岡店長福谷俊紀、福助商事株式会社福岡支店長隅野滋之佑、株式会社丸保代表取締役奥田保市、株式会社まる代表取締役小菅治夫、外市株式会社取締役社長廣瀬和一郎、株式会社ヒゼン代表取締役岡弥一、株式会社第二きもの代表取締役二枝俵司、株式会社トキワ商事取締役社長土肥信一郎、白井織物株式会社代表取締役白井亨、柘植株式会社代表取締役柘植宗忠、牧野春二商店牧野春二、帯の丸松浦本実、田中株式会社取締社長田中昂、松居織物株式会社福岡支店取締役社長大塚實各作成の各取引内容照会に対する回答書
一、株式会社ヒゼン取締役社長岡弥一、株式会社第二きもの山本某、裏井株式会社代表者裏井健二(二通)、株式会社大嘉代表取締役澤田嘉作、堀川商店堀川惣三各作成の各証明書
一、西山株式会社取締役社長作成の確認書
一、牧野春二、株式会社美吉代表取締役北村義雄、川上肇各作成の各上申書
一、株式会社福岡相互銀行井尻支店長桑原瑩司作成の証明書(検九五号)
一、大蔵事務官作成の昭和五四年二月二五日付査察官調査書(検九六号)
一、大蔵事務官作成の昭和五四年一月二五日付、同月三〇日付、同年二月二六日付各査察官調査書
判示第一の事実につき
一、押収してある昭和五一年分所得税青色申告決算書一綴(同押号の一六)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(検一〇〇号)
一、大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面(検一〇一号)
一、押収してある総勘定元帳一綴(同押号の一)
一、大蔵事務官作成の昭和五四年三月八日付査察官調査書(検五〇号)
一、押収してある仕入台帳一綴(同押号の四)
一、株式会社まる今村雅昭作成の証明書
一、大蔵事務官作成の昭和五四年二月二一日付査察官調査書(検五四号)
一、田中吉春の検察官に対する供述調書
一、田中吉春作成の上申書
一、糸山不動産代表者糸山克明、司法書士内川雄石各作成の証明書二通
一、押収してある登記済権利証書(写)一通(同押号の一四)(不動産売買契約書一通を添付)、領収証二枚(同押号の一五の一、二)
一、株式会社福岡銀行井尻支店長秋吉安清作成の証明書二通(検九三、九四号)
判示第二の事実につき
一、押収してある昭和五二年分所得税青色申告決算書一綴(同押号の一七)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(検一〇二号)
一、大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面(検一〇三号)
一、押収してある総勘定元帳一綴(同押号の三)、売掛帳二綴(同押号の七、八)
一、大蔵事務官作成の昭和五四年三月八日付査察官調査書(検四八号)
一、押収してある昭和五二年末棚卸表一綴(同押号の九)
一、押収してある名刺一枚(同押号の一二)
一、押収してある仕入台帳一綴(同押号の五)
一、大蔵事務官作成の昭和五四年二月二一日付査察官調査書(検六二号)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項前段、二項、一二〇条一項三号に各該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑とを併科し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項本文により判示第二の罪の罰金刑を右懲役刑と併科し、同条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役六月及び罰金一、〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて、主文のとおり判決する。
昭和五五年七月二五日
(裁判官 佐伯光信)